私が某メーカーの設計社員だった頃の話。
施主のKさんと営業担当のIさんは相性が悪かった。
Kさんは、特に細かいタイプというわけではなかったが、思い入れのある部分については何が何でもご自身の意見を通そうとする傾向があった。
対するIさんはまだ若く、当初はKさんの要望に丁寧に対応しようと頑張っていたのだが、KさんがあまりにもIさんの言い分を聞こうとしないので、つい感情的になってしまうことがあった。
また、Kさんの希望する規模では、パックプラン(既成のプラン集にあるプラン。なぜか、フリープランよりかなり割安だった)を採用したとしても、予算との間に数百万円の開きがあった。
常識的に考えればまず契約は無理だと思われた。
しかし、結果的には契約が成立した。お互いの利害がかろうじて一致したのだ。
Kさんは、Iさんにもパックプランにも納得はいかないようだったが、元々希望していたメーカーであり、これから打合せが始まるインテリアでやりたいことをやればよいと思われたのではないだろうか。
一方のIさんも数ヶ月間契約が取れておらず、精神的にかなり追い詰められていた。
全ての仕様を最低ランクのものに落とした上で、上司に頼み込んでさらに数百万円の値引きをしたのだ。
ただ、お互い肝心なことはあいまいにしたままだった。
その後どうなったかはご想像の通り…あいまいにしていたことが次々に問題となって出てきた。残念ながら、竣工した家もそれなりのものとなってしまった。
利害が一致すれば仕事は成立する。また仕事であるから、好き嫌いに関係なく最高の結果を導き出さなければならない。
臨機応変に対応できるスキルが重要であることに異論は全くない。
しかし、こと「住宅」に関しては必ずしもそうではないと思う。
誤解を恐れずに言えば、いい家づくりをするための最も重要なポイントは、お互いの相性(単純な好き嫌いも含めて)ではないかと思う。
次回につづく。
Na
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