2009年5月25日月曜日

ある冬の日の夕方、事務所のM君がクワズイモを買ってきた。

M君:「店のオッサンが安くしてくれたので、2つ買っちゃいました」とうれしそうな顔。

よく見てみると、葉が1枚しかなく、しかも黄色く枯れかかっていた。

しかも葉の裏には白くフワフワしたカビのようなものがびっしりと…明らかに手入れされておらず、冬であることを考慮に入れても元気がなかった。

近くで見ていたT君:

「これ、茎に穴空いてますよ。うわっ!何か出てきた。痒い!」とその場を立ち去る。

さらにAさん:「オヤジにつかまされたんじゃないの?」と冷ややかな表情。

M君:「オレの金で買ったんだからいいじゃないですか!」とふて腐れる。

さらに詳しく調べてみると茎の根元の中心部がドロドロに腐っていた。

典型的な”根腐れ”の症状…致命傷だった。

クワズイモは太くうねった根茎と大きな葉が特徴で、数年前のアジアンブームとともに大流行した観葉植物だが、最近は店頭に並ぶ数も減り、やや飽きられた感がある。

しかし彼は、そんなことはお構いなく、葉のカビをきれいに拭き取り、腐った中身のドロドロを掻き出し、オルトランで害虫駆除を行った。

さらにプラスチックの鉢では納得がいかないと、私の家で眠っていた白い大理石の鉢に2本まとめて植え替え、薄汚れていた鉢の表面をサンドペーパーで磨き続けた。

今、そのクワズイモは事務所の一角で青々とした葉を茂らせている。

白い大理石の鉢との相性もなかなかのものである。

観葉植物の専門家がいるとすれば、流行が過ぎ状態も悪い植物を買い、茎にダメージを与えた上で、最悪の時期に植え替えるなど全くナンセンスだと言うだろう。

しかし結果的に見れば、彼は安い金額でほぼ希望通りのクワズイモを手に入れたわけであり、瀕死の植物を生き返らせたことによる「ちょっとした達成感」というオマケもついてきたのだ。

一般常識や時代の流れから外れていても、自分の価値観に従い、その時できることを精一杯やる。

ちょっと大げさかもしれないが、そんなのもアリかなと思う。

Na

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